手紙

2年前、大阪から福島県へ出張の際、行き帰りの新幹線の中、僕が耳にさし込んだイヤホンからはあなたの歌声だけが流れていました。

 

 

コンサートに行った時にあなたのあまりの迫力に圧倒されたこと、あなたが歌詞を間違えておどけたこと、あなたが数メートル先で手を振ってくれたこと、そんなことを思い出しながらの移動は、長時間でも苦になりませんでした。

 

子どもが生まれてからはあなたの歌声にゆっくり浸る時間もなく、僕にとっては久しぶりの贅沢な時間でした。

 

 

その数日後、お昼のニュースであなたの本名が耳に飛び込んできました。

なにが起きたのか分かった瞬間に、なにがなんだか分からなくなりました。

頭だけでなく、身体が真っ白になってしまったような感覚。

 

息子の声だけが無邪気に頭に響きます。

 

 

それから、あんなに好きだったあなたの歌声を聴くのが辛くなりました。

 

ニュースであなたが取り上げられるたびに胸が苦しくてとても直視することは出来ませんでした。

 

あなたが残した歌たちがあまりにも素晴らしかったからこそ、辛くてしょうがなかった。

嫌いになろうと思っても無理でした。

嫌いになれればどんなに楽だったか。

 

 

いま、ようやくあなたの歌をもういちど身体に入れることが出来ています。

不安もあります。

どこかで覚悟もしています。

 

 

でも、聴けば聴くほど

心から「もう一度」と願ってしまっています。

 

 

もし、他のアーティストがあなたと同じ過ちを犯したら、僕は同じ気持ちにはなっていないと思います。

だからこそ、僕のこの気持ちが全く理解できない人がいることは想像がつきます。

 

 

 

でも、きっと熊本にも僕のようにあなたを待っている人がいるはずです。

あなたの地元、九州です。

 

あの時の、あなたがしたように

あなたにしか出来ない支援はあると思います。

 

もちろん、こんなことを言わなくてもあなたが一番よく分かっているはずです。

あなたにしか出来ないこと。

 

正直、被災された方の気持ちは分かる、なんて軽々しいことは言えません。

僕がその立場だったら、なんて想像もつきません。

 

いま、あの時と同じように

多くの人が、「自分に出来ること」を考えて、一生懸命に行動しているはずです。

直接的な援助。間接的な援助。

現地でのお手伝いをする人。物資を調達して運ぶ人。募金をする人。情報を発信する人。こんな時だからこそいつも通りに過ごす人。いつも以上に仕事を頑張る人。

 

自分の無力さを感じながら、僕は僕なりの「僕にできること」をやっていきます。

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あなたの歌声を聴きながら。

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投稿者プロフィール

松本 圭太
松本 圭太
大阪で活動するフリーランスのコピーライター。
「クレーム対応」、「趣味のプロレス話」、「子供との楽しい日々」を綴る当ブログには隠れファンが多い(隠れなくてもいいのに・・・笑)

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